マンC制裁 115件違反疑惑の概要
マンチェスター・シティ(以下、マンC)は2023年2月、プレミアリーグから115件もの財務規則違反の疑いで告発されました。この事態は、サッカー界に大きな衝撃を与えています。違反の内容は多岐にわたり、スポンサー収入の水増しや選手・監督への隠れた支払いなど、クラブの財務状況を実際よりも良く見せかけていた疑いが持たれています。
これらの違反は、2009年から2018年にかけての9シーズンに及んでおり、マンCがアブダビ王族に買収された直後から、ペップ・グアルディオラ監督が就任するまでの期間をカバーしています。この期間、マンCは急速に成長し、プレミアリーグで3度の優勝を果たしています。
マンCに対する115件の違反疑惑は、大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類されます:
特に注目されているのは、アブダビ首長国のシェイク・マンスールが所有する企業からの過大なスポンサーシップ収入です。これらの収入が実際の市場価値を大きく上回っていたとされ、クラブの財務状況を不当に良く見せかけていた可能性があります。
また、当時の監督であるロベルト・マンチーニへの隠れた報酬や、選手への追加支払いなども疑惑の対象となっています。これらの行為は、サラリーキャップを回避し、より多くの高額選手を獲得するための手段だったのではないかと指摘されています。
プレミアリーグによる調査は2018年12月から開始されました。しかし、マンCはこの調査に対して非協力的な態度を取り続けたとされています。これは115件の違反疑惑のうち、35件が「調査への非協力」として挙げられていることからも明らかです。
調査の過程で、マンCは2021年にイングランドの高等法院に訴えを起こし、プレミアリーグの調査権限と文書提出要請の正当性に異議を唱えました。しかし、この訴えは棄却され、その後の控訴も失敗に終わっています。
現在、独立委員会によって改めて調査が行われており、2024年11月にはファイナンシャル・フェアプレーに関する規則違反の審理が予定されています。
マンCに対する処分については、様々な憶測が飛び交っています。最も軽い処分としては巨額の罰金が考えられますが、より厳しい処分として以下のようなものが予想されています:
特に注目されているのは降格処分の可能性です。プレミアリーグの規則では、独立委員会に「無制限の権限」が与えられており、理論上はどのような処分も可能とされています。
しかし、マンCは一貫して無実を主張しており、仮に有罪判決が下された場合でも、法的手段を用いて徹底的に争う姿勢を見せています。
この問題に関連して、注目されているのがペップ・グアルディオラ監督の去就です。グアルディオラ監督は2023年11月の時点で、「もしマンCがリーグ1(3部リーグ)に降格されても、私はここにいる」と発言していました。
しかし、最近の報道によると、グアルディオラ監督は2025年の契約満了を待たずに、2024年夏にもクラブを去る可能性が浮上しています。これは、マンCへの処分が2025年夏に下される可能性が高いことと関連していると見られています。
グアルディオラ監督の去就に関する詳細はこちらの記事を参照してください。
グアルディオラ監督の去就は、マンCの今後に大きな影響を与える可能性があります。彼の指揮下でマンCは数々のタイトルを獲得し、2023年にはクラブ史上初のトレブル(プレミアリーグ、FAカップ、UEFAチャンピオンズリーグの3冠)を達成しています。
マンCの財務規則違反疑惑は、プレミアリーグの他クラブからも大きな注目を集めています。多くのクラブが、公平な競争環境の確保を求めて、厳正な調査と適切な処分を要求しています。
特に、マンCと優勝を争ってきたリバプールやマンチェスター・ユナイテッドなどのクラブは、過去のタイトル争いの正当性に疑問を投げかけています。これらのクラブは、マンCが不正な手段で競争力を高めていたのであれば、過去の結果を見直すべきだと主張しています。
また、この問題はプレミアリーグ全体の信頼性にも関わる重大な問題として認識されています。リーグの財務規則の実効性や、監督機関としてのプレミアリーグの能力が問われることになるでしょう。
さらに、この問題は欧州サッカー全体にも波及する可能性があります。UEFAは既に2020年にマンCに対してチャンピオンズリーグ出場停止2年の処分を下しましたが、これはスポーツ仲裁裁判所(CAS)で覆されています。プレミアリーグの判断は、UEFAの財政的フェアプレー(FFP)規則の今後にも影響を与える可能性があります。
マンCは、これらの告発に対して強固な姿勢で臨んでいます。クラブは一貫して無実を主張し、すべての告発を否定しています。また、クラブは高額な弁護士費用を投じて、法的な面からも徹底的に争う姿勢を見せています。
クラブの戦略として注目されるのが、プレミアリーグに対する反訴の動きです。マンCは、プレミアリーグの関連当事者取引(APT)規則が競争法に違反しているとして、訴訟を起こしています。
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この訴訟では、APT規則が不当にマンCを差別し、ピッチ上での成功を抑圧しているという主張がなされています。また、クラブはこの規則によって停止されたスポンサー契約による損失として、金銭的な損害賠償も要求しているとされています。
この法的な動きは、マンCが単に受け身の姿勢ではなく、積極的に自らの正当性を主張し、プレミアリーグの規則自体に異議を唱えるという戦略を取っていることを示しています。
結論として、マンCの財務規則違反疑惑は、単にひとつのクラブの問題にとどまらず、プレミアリーグ全体、さらには欧州サッカー界全体に大きな影響を与える可能性のある重大な問題です。今後の調査の進展と、最終的な判断が注目されます。この問題の結末が、サッカー界の財務規律と競争の公平性に関する重要な先例となることは間違いないでしょう。